書評紹介

装飾の復権 空間に人間性を

内井昭蔵著



建設通信新聞 2004年4月7日 紙面より

読書
人間性表現する「必然としての装飾」
 ロマネスク,ゴシック,バロック,アール・デコなど,時代を反映し建築装飾もさまざまに表情を変えてきた。しかし,20世紀に入り,機能に無関係な装飾は悪とし「様式の一切無いのが新しい様式である」と主張したアドルフ・ロースに代表される脱・装飾性重視のモダニズムが建築を支配した。内井氏は「人間性をいかに回復するかを建築でできるのが<装飾>」であり,「人間の分身,延長としてつくっていくのが装飾の考え方だ」(前文より)といっている。 言われてみれば装飾に対する「好き嫌い」は,人間に対する「好き嫌い」の感覚に通じる気がする。それは建物の様式・装飾,あるいは内装やインテリアというものが,そこに暮らす人間の投影であるのではないだろうか。様式という選択肢の中ににはシンプルさを追求した脱・装飾様式も含まれる。だがその空間は拒否もしないが決して隷属しない<脱・個性>の切り離された空間である。あるいは田園から都市へ,集団から個へと向かう時代性を反映しているとも言えるだろう。 多くの人は,一日のほとんどを建物の中で過ごす。その建物から装飾や様式を奪うことは,人間性を好んで失っていくことに他ならない。問題はそれが真に人間性を表現する「必然としての装飾」であるかどうかだ。
定価2730円。彰国社(東京都新宿区坂町25・電話03-3359-3231)。 






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