書評紹介
再び健康な建築 生活空間に倫理を求めて
内井昭蔵著
日刊建設通信新聞 2003年8月26日 紙面より
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四半世紀の思いを集大成
故内井昭蔵氏の提唱した「健康な建築」が建築設計界で大きな反響を呼んだのが1980年,すでに四半世紀が経過しようとしている。02年8月,日本建築学会のシンポジウムに向かう途中で倒れ,帰らぬ人となった氏の生き様は,まさに建築とともに歩んだ人生を物語っている。
その最期の時にもっていた鞄の中に,この本の原案が入っていたそうだ。ベースは,氏が健康な建築の提唱以降,見,感じ,思うものをその折々に発表していた寄稿や論文,随筆である。これまでの思想の流れに道筋をつけ出版しようとしていたという。その遺志を継ぎ,
パートナーであった内井乃生さんが遺稿を整理し,一周忌に合わせ出版した。自身が5年がかりで取り組んで未刊であったものをまとめあげた苦労は計り知れない。故人の思想をできる限りまっすぐ伝えようとする配慮から,流れとして掴むのは難しいと感じるかも知れない。
だが,一つひとつの章の完成度は高く,その根底に流れる姿勢は終始一貫している。建築設計界を支えていく若手や建築を学ぶ若者には一建築家の生涯を通じてのメッセージとして,ぜひ知ってもらいたい。一教育者として若者の指導にも情熱を注ぎながら,早すぎた死を迎えた故人の思想を知るうえでは欠かせない。
2500円(税別)。彰国社(東京都新宿区坂町25・電話03-3359-3231)。
室内 2003年11月号より
タイトルに「再び」とあるように,この本は,内井昭蔵さんが昭和60年以来,再び「健康な建築」について語ったものである。正確に言うと,出版のための原案をまとめかけたまま,昨年の8月3日,内井さんは出張に向かう羽田空港内のバスの中で急逝してしまった。だから遺作集ともいえるこの本は,夫人の乃生さんが引き継いでまとめた。
建築家として40年のキャリアをもつ内井さんの代表作は,桜台コートビレジであり,東京YMCA,野辺山高原センター,世田谷美術館,そして吹上御所,都市計画から,小ぢんまりした美術館まで幅広い。内井さんはいつも「あたたかい建築,健康な建築,建主に対してやさしい建築」をめざしていたという。
健康な建築とは何か。抗菌,高断熱といった機能のことでは,もちろんない。それは,病も含めて,自然の秩序の中に組込んだ建物であり,人類の理想の建物だと内井さんは考えていた。今や,健康は,私たちの最大のテーマだ。健康な建築について,考え直す時である。内井さん自身も,あたたかく健康的で,やさしい人だった。(木)
日刊建設工業新聞 2003年12月11日 紙面より
イマジネイティブな生活空間を求めて,と副題の付いた名著『健康な建築』が彰国社から出版されたのは85年。画一的な建築や都市が人間性や自然を欠いていることを,不健康という分かりやすい言葉で鋭く指摘し,建築界に一石を投じた。
それから17年。建築家,内井昭蔵はあまりにも唐突に帰らぬ人となった。残されたかばんの中に,著作の出版原案が入っていた。その思いをくみ,妻の乃生さんが構成,編集して完成したのが本書である。人間性,そして職能倫理を追究した建築家の精神が隅々に宿っている。
(2500円+税)