書評紹介

池袋北口職人大学

「池袋北口職人大学」編集委員会編



日刊建設通信新聞 2003年7月22日 紙面より

読書 この一冊
匠の技学ぶ ひたむきな若者のドキュメント
 新宿,渋谷などと並ぶ東京都心の繁華街・池袋。JR,西武,東武の各線と地下鉄が乗り入れる巨大なターミナルがある。JRだけでも1日の乗降客数は114万人を数える。
 このターミナルの一角にある目立たない小さな出入口「北口」を出た平和通り商店街をしばらく歩いたところに,東京建築カレッジがある。建設産業で働く若者たちが,木造建築という日本古来の伝統技術を身に付ける職業能力開発短期大学だ。
 働きながら学ぶところが大きな特徴で,日ごろは建設関係の事業所に所属して働き,週2度,2年間学校に通う。学生は2学年合計しても,60人ほどと少ない。というよりも少数精鋭といった方がいいかもしれない。「本物の家づくりをしたい」。この学校にはいるのは,こうした熱い思いを胸に入学してくる若者ばかりだからだ。
 大学は東京土建一般労働組合が設立した。労働組合が学校を設立するというのは日本では珍しいかも知れないが,欧米ではよくあることだ。将来の産業の担い手を組合が育てる。
 この本は,組合が設立したカレッジで,若者たちが棟梁をめざして日本の伝統技術の習得に挑む姿を伝えるドキュメントであり,物語でもある。最近は,機能性,経済性が重視されるあまり,匠の技が見落とされているのではないか,と「池袋北口職人大学」の編集委員会はそう指摘する。そうした社会の風潮のなかで,伝統の技をしっかりと受け継ごうとする若者がいることを,この本を通じて知ってもらおうと執筆したものだ。本物の家づくりを志した,若者たちの人間像と,7年間にわたる学び舎での熱き情熱が伝わってくる。
  1500円(税別)。彰国社(東京都新宿区坂町25・電話03-3359-3231)。 



TOPに戻る