彰国社

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建築家と小説家

近代文学の住まい

若山滋 著

B6・262頁

定価1,980円(本体1,800円+税)

ISBN:978-4-395-01263-3

2013年02月

近代日本の文化空間の構築は、一方で旧来型空間の破壊であった。それは、日本人の心の中に深く影を落とすが、この葛藤を描いたのが文学であった。本書は、明治から現代にいたる多くの文学作品と建築作品を引用しながらまとめた、「建築からの文学史」であると同時に「文学からの建築史」。近代における日本人特有の物語を浮き彫りにする。

[目次]
プロローグ 建築からの文学史 文学からの建築史

辰野金吾と夏目漱石の時代
第一章 開化の時勢
コンドル来日 東洋風の西洋
浮遊する二階 『浮雲』
建築家になろうとした作家 夏目漱石

第二章 煉瓦と下宿
赤煉瓦の街 辰野金吾
鈴木禎次という建築家 『三四郎』
近代への不安 『こころ』
文学を生んだ下宿 『蒲団』

後藤慶二と谷崎潤一郎の時代
第三章 モダンと田園
アール・ヌーヴォーとゼツェッシオン 後藤、堀口、村野
田園の発見 『武蔵野』
肉体の延長 谷崎潤一郎

第四章 個室と密室
密室のまなざし 『屋根裏の散歩者』
フランク・ロイド・ライト 帝国ホテル
取り残された場所 『濹東綺譚』

坂倉準三と川端康成の時代
第五章 起ち上がる美と滅びゆく美
バウハウスとル・コルビュジエ 前川、坂倉、谷口
白色のモダニズム 『風立ちぬ』
滅びゆく空間の少女 『伊豆の踊子』『雪国』『古都』

第六章 戦火の下で
ブルーノ・タウトと坂口安吾 『日本文化私観』
二つの関西 『細雪』と『夫婦善哉』
小林秀雄の建築論 『蘇我馬子の墓』

丹下健三と安部公房の時代
第七章 日章の名残
戦争と平和のコンペティション 丹下健三の登場
醜悪を含む優美 『金閣寺』『午後の曳航』
三島由紀夫という建築 その自邸
人間を囲うもの 『砂の女』

第八章 成長という破壊
見ること見られること 『箱男』
メタボリズムとポストモダン 篠原一男と磯崎新
意識の共同体 『風の歌を聴け』

エピローグ 『サラダ記念日』 近代日本という神話
あとがき

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