彰国社

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リノベーションからみる西洋建築史

歴史の継承と創造性

伊藤 喜彦・頴原 澄子・岡北 一孝・加藤 耕一・黒田 泰介・中島 智章・松本 裕・横手 義洋 著

B5・152頁

定価2,640円(本体2,400円+税)

ISBN:978-4-395-32147-6

2020年04月

西洋建築史を様式変遷史ではなくリノベーションの重層としてとらえ、リノベーションの創造性という視点から西洋建築史を再考する。ローマ神殿の円柱の入手に奔走した司祭、小城館に王統の継続性を託した王……。時間が積み重なった建築に人が介入するとき、そこには意味と意志がある。現代のリノベーションのコンセプトワークにも参考となる1冊。

[主な目次]
第1章 都市組織の中に生き続ける古代建築
リノベーションの手法 1 オーセンティシティ /2 介入:インターヴェンション /3 エレメント保存 /4 ファサード保存/5 ボリューム保存 /6 維持・保全 /7 建築的介入 /8 総合的介入
古代神殿のリノベーション 1 パンテオン(ローマ)/2 アテネ神殿(シラクーザ)/3 ミネルヴァ神殿(アッシジ /4 アウグストゥス神殿(ポッツォーリ)
ディオクレティアヌス浴場のリノベーション  1 ミケランジェロによるリノベーション /2 周辺都市組織への影響 /3 修道院から博物館へ
古代劇場のリノベーション 1 マルケルス劇場 /2 ナヴォーナ広場
古代ローマ円形闘技場のリノベーション 1 遺構の住居化 /2 ルッカのアンフィテアトロ広場
章末事例
都市組織をつくるリノベーション/クリプタ・バルビ
主要な古代建築のリノベーション事例/パルテノン神殿(アテネ )、メゾン・カレ(ニーム)、 ポルタ・ニグラ(トリア)、ディオクレティアヌス宮殿(スプリト)

第2章 再利用による創造、改変がもたらした保全
リサイクルから生まれたローコスト建築 1 コルドバ大モスク創建(785/786-786/787)/2 再利用の創造性
保全と継承から生まれた柔軟性と創造性 1 第一期拡幅(833-48年)/2 第二期拡幅(962-71年)/3 第三期拡幅(990年頃)
大聖堂になった大モスク(1236年) 1 主廊のない教会堂 /2 インフィルとしての礼拝室群 /3 中世における変化と保全
変容する世界と建築 1 保守派vs開発派(1523年)/2 それでもモスクは残った/3 変わり続けることで、生き続ける
章末事例
リノベーション作品としてのイスラーム建築/ダマスカスの大モスク、
ルクソール神殿のアブー・イル・ハッガーグ・モスク、エスファハーンの金曜モスク、グラナダのアルハンブラ宮殿

第3章 古代末期から中世へ
古代末期:キリスト教建築の誕生
古代から中世への橋渡し
紀元千年の建築
クリュニー大修道院の拡張工事
最初のゴシック建築
ロマネスクからゴシックへ
章末事例
長い時間をかけて変化していく中世建築/サンタ・コスタンツァとサンタニェーゼ・フオーリ・レ・ムーラ教会堂、モン・サン=ミシェル
都市組織をつくるリノベーション/レ・ムラーテの再生計画

第4章 歴史的建築の再利用と建築家の創造性
テンピオ・マラテスティアーノにおける新と旧、聖堂と霊廟の融合という実践 1 アルベルティの『建築論』と建築作品/2 テンピオ・マラテスティアーノの建設小史:創建からアルベルティまで、アウグストゥスの凱旋門の引用とその意味/3 天使の柱頭/4 ラヴェンナの石材の再利用とその意図:スポリアとテンピオ・マラテスティアーノ/5 外部と内部の対峙、歴史的重層性:霊廟と教会堂の融合
初期近代のサン・ピエトロ大聖堂再建における旧大聖堂の役割 1 旧聖堂が壊されるまで:教皇ニコラウス5世からパウルス5世まで/2 なぜ旧大聖堂は壊されたのか
章末事例
ルネサンスの建築家によるリノベーション/パラッツォ・ドゥカーレ(ウルビーノ)、ピエンツァ、バシリカ・パラディアーナ、サンティッシマ・アンヌンツィアータ広場、ペルッツィと古代建築のリノベーション、セルリオの『第七書』とリノベーション、サンタ・マリア・デリ・アンジェリ・エ・デイ・マルティーリ教会堂とミケランジェロ

第5章 近世ヨーロッパ宮殿建築の新築更新と建築再生
近世貴族住宅の様式と建築計画の特徴 1 近世貴族住宅の主な様式/2 近世貴族住宅の平面形式
ルーヴル宮殿におけるスクラップ・アンド・ビルドと建築再生 1 ルーヴル城塞略史/2 17世紀半ばまでのルーヴル宮殿略史/3 ローマの巨匠ベルニーニの計画案に対するフランス人建築家たちの反対の意味
ヴェルサイユ新城館建設をめぐる小城館の「保存問題」 1 ヴェルサイユ城館略史/2 ル・ヴォーによる「修景」-廐舎とサーヴィス棟の増築-/3 新城館建設をめぐる小城館の「保存問題」/4 「ヴェルサイユ宮殿:概論」に示されたコルベールの建築観
建築物による王朝の記憶の継承
章末事例
新古典主義王室建築のリノベーション事例/パリのパンテオン、フランス国立図書館(リシュリュー地区)

第6章 線的な開発と面的な継承の都市再生
オスマンによる近代都市大改造の基盤となる中世都市パリの形成 1 都市拡張と市壁/城壁の構築・解体/2 市壁の跡地利用/3 境界壁/4 都市組織の変遷に見る線的開発と面的保存
パリ大改造を通じた都市組織の再編 1 ナポレオン3世とセーヌ県知事オスマンによる道路開設事業(オスマニザシオン)の基本構造/2 道路開設事業── 新設道路と既存建築との縫合:オスマンの都市リノベーターとしての側面、ポスト・オスマン期のレオミュール通り
章末事例
パリ大改造の波及:「オスマニザシオン」と「ファサディズム」

第7章 「過修復」から「保全」・「保護」へ
イギリスにおける国家、宗教、建築 1 イングランド国教会の樹立/2 ゴシック・リヴァイヴァル/3 教会堂不足に伴う修復事業の進行
修復をめぐる議論 1 ジョン・ラスキン/2 ジョージ・ギルバート・スコット
セント・オルバンズ大聖堂 1 設立から修道院解体まで/2 教区教会堂時代/3 19世紀初頭から半ば/4 スコットの修復建築家就任/5 大聖堂への昇格とグリムソープ卿の修復/6 屋根論争/7 セント・オルバンズ、その後
古建築保護協会
章末事例
ジェイムズ・ワイヤットの大聖堂修復/リッチフィールド大聖堂、ソールズベリー大聖堂、ヘレフォード大聖堂、ダラム大聖堂

第8章 建築が紡ぐ人々の意志
記念的建造物のサバイバル 1 装飾の象徴性/2 建築の重層性/3 都市の持続性
継承すること、創造すること
拡大・成長する文化施設
建築遺産の拡大と多様性
章末事例
あらゆる建築は過去と対話する/外観を保持する:ブンタ・デラ・ドガーナ、国立西洋美術館/悼みの表象:カイザー・ヴィルヘルム記念教会堂、広島ピースセンターと原爆ドーム/機能の存続:ドイツ国会議事堂、アルテ・ピナコテーク/産業遺産の活用:ファン・ネレ工場、フォンダツィオーネ・プラダ/化粧直し:ロイヤル・パヴィリオン、ジョン・ソーン自邸/歴史的由緒への信頼:クロイスターズ、ヴァルハラ神殿/都市街路の記念化:ガレリア・ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世、リンク・シュトラーセ沿いの建築群/継承される作家の意志:サグラダ・ファミリア教会堂、フィレンツェ大聖堂ファサード/同一の作家による更新:ゲーテアヌム、代官山ヒルサイドテラス/モニュメントの移築:アブシンベル神殿、帝国ホテル/万博建築の復元:バルセロナ・パヴィリオン、レスプリ・ヌーヴォー館

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