地域の自然に合致し、地球環境を維持できる、人間に快適かつ悦びを与える建築デザイン（バイオクライマティックデザイン）をどのように実現していくのか。本書は建築環境工学の基礎から具体的な設計手法までを学ぶことのできる実践的なテキストである。第2版では、エネルギーや気候の理解を深め、建築デザインに生かす方法なども加えた。

［目次］
１章　目でみる建築環境
気候
気温／日射／風／相対湿度／クリモグラフ
光
直射光／天空光／照度／輝度／採光／昼光照明／均斉度／昼光率
熱
伝熱／放射／対流／伝導／蒸発／熱貫流／断熱／気密／蓄熱
風
換気／自然換気／風力換気／温度差換気／空気質／機械換気／空気質濃度／必要換気量
人間
光／比視感度／色温度／グレア／熱／平均放射温度／作用温度／風／温熱環境評価／代謝量／着衣量／
新有効温度／標準新有効温度／予測温冷感申告／予測不満足者率
エネルギー
一次エネルギーと二次エネルギー／電気エネルギー／化石燃料／再生可能なエネルギー／エネルギーの使われ方／温室効果ガスの排出／家庭の実態／省エネ家電／高効率機器／ V2H ／エネルギーの見える化

２章　みつける・つくる建築環境
ここちよい熱環境
　みつける―身のまわりの熱環境／行動域と感覚／自分なりのここちよさ
　つくる――日本家屋における熱環境調整：建具／日本家屋における熱環境調整：縁側
空気の汚れと換気
　みつける―寒くない換気／室内空気を汚すもの／窓の動き
　つくる――機械換気システム／自然エネルギーを利用した予熱給気
住宅の熱性能
　みつける―高い断熱性能の影響／熱容量の室内温熱環境へ与える影響
　つくる――無暖房住宅／次世代ゼロ・エネルギー住宅
日よけの効果
　みつける―日よけの効果／日よけの設置場所による効果の違い／
　　　　　　日よけの種類と組み合わせの効果
　つくる――回転式外付け日よけ／太陽高度によって使い分ける日よけ／
　　　　　　暖房の熱源にもなる日よけ
窓の断熱性能
　みつける―冬の窓の冷たさ／窓まわりの空気の流れ／窓から逃げる熱
　つくる――二重サッシ／断熱内戸・断熱障子
光の強さと弱さ
　みつける―自然の光は明るい／窓と明るさの関係
　つくる――複数面から採光する：両面採光／反射光を利用する：地窓／
　　　　　　庇の形を工夫：ライトシェルフ／北面採光で景色を美しく見せる／
　　　　　　居住者による調整：可動ルーバー
水の蒸発がつくる涼しさ
　みつける―蒸発冷却／遮熱と蒸発冷却の関係／植物の蒸発冷却の効果
　つくる――二重屋根の天井裏面に散水／蒸発冷却ルーバーによる冷放射・冷気の供給
地域の気候
　みつける―地域で異なる気候／気候要素の変化
　つくる――パッシブデザイン手法を組み立てる
空気中の水蒸気
　みつける―空気中の水蒸気／生活にともなう水蒸気の発生
　つくる――内壁仕上げに吸放湿材を施工
集落の風
　みつける―路地の中の風の動き／集落内の風の動き
　つくる――涼しい場所を探して涼む人びと／路地から風を採り入れる／
　　　　　　さまざまな方向から風を採り入れる
雪国の住宅と暮らしのかたち
　みつける―屋根勾配／雪国における玄関の工夫
　つくる――ピラミッド型屋根（耐雪型）／防風林に抱かれた茅葺き民家／
　　　　　　屋外通路としての緩衝領域

カタとカタチの見方・読み方とバイオクライマティックデザイン
環境をカタチに　環境に配慮する設計プロセス

３章　バイオクライマティックデザインの系譜とデザイン手法
バイオクライマティックデザインの系譜
温度差を利用する　聴竹居（1928 年）
エネルギー・物質を循環させる　Domo Multangla（1936 年）
風を通す　日土小学校（1958 年）
排熱を利用する　ＮＣＲビル（1962 年）
寒冷地にて閉じつつ開く　札幌の家・自邸（1968 年）
暖かさ涼しさを蓄える　つくばの家Ⅰ（1984 年）
太陽・樹木・大地のポテンシャルを生かす　相模原の住宅（1992 年）
人間と環境を緩やかにつなぐ　アシタノイエ（2004 年）
厳しい夏・冬に備えた室内気候をつくる　オレンジリビングベース（2017 年）

COLUMN
建築計画原論の系譜と成立　
ドイツ・バウビオロギー（Baubiologie）の基本概念
工業化住宅からバイオクライマティックデザイン住宅へ

DIALOGUE
住まいに２本の煙突を立てる

資料編　基準値／物性値／測定機器と測定方法／気象データ／単位換算表