
心を癒やす環境デザイン
デンマーク・オランダの高齢者居住環境に学ぶ
田中直人・老田智美 著
四六・168頁
定価2,860円(本体2,600円+税)
ISBN:978-4-395-32176-6
2022年04月
本書は、高齢者居住環境で求められる心理的な配慮、「心を癒やす」仕掛けと考え方をデンマークやオランダの事例から見出し、提案する。これまでは高齢者を支援するためのデザインが、あらゆる世代にも楽しい、魅力的なものを生み出すためのデザイン手法として考察できる内容となっている。
[目次]
1章 認知症高齢者にとっての居住環境
・超・超高齢社会を取り巻く背景
・高齢者へのバリアフリーと認知症高齢者へのバリアフリー
高齢者と手すり / バリアフリーとデザイン / 高齢者の自尊心を守るデザイン /
認知症高齢者にとっての「バリア」 / お手製のバリアフリー
・社会が思う高齢者像
環境の変化と認知症高齢者の心理 / BPSDにも配慮した環境デザインの必要性
2章 心を癒やすデザイン手法
1 カラーデザイン
・生活の中の色の世界
・居住者の環境を守るカラーガイドライン
・発達障害のある人が持つ色のイメージ
・分かりやすさを引き出す色
2 ウェイファインディング
・「空間を把握する能力」を引き出すデザイン
・感覚刺激で場所を伝える
・奥への誘導
3 アフォーダンス
・アフォーダンスとそれによる不都合な行為
・アフォーダンスの想定とデザイン
4 レミニセンスデザイン
・レミニセンス(回想法)
・インテリアとしてのレミニセンスデザイン
・認知症の症状に配慮したレミニセンスデザインの仕掛け
5 カームダウンデザイン
・カームダウンコーナーの設置
・共同生活を要する施設のカームダウンデザイン
・認知症高齢者にも必要なカームダウン
・建物内に点在する「カームダウンコーナー」
6 感覚刺激デザイン
・スヌーズレン
・認知症高齢者のためのスヌーズレン
・感覚刺激を環境にちりばめる
7 各種セラピーデザイン
・多様なセラピーを環境へ展開する「セラピーデザイン」
・アートセラピーデザイン
各セクションのロゴから展開したデザイン / 「可変性」を前提としたアート /平面と立体の融合 / 個室にもアートの世界
・園芸セラピーデザイン
クラインガルテンの再現 / グリーンインテリア
・アニマルセラピー
個人が飼育するニワトリ / 鳥を愛でるインテリアデザイン
COLUMN
非日常体験としての感覚刺激
地域に息づく昔話の世界観がまちの環境をつくる―アンデルセンの物語
誰もが楽しめる居心地のよい夢の国―チボリ公園
3章 デンマーク・オランダのナーシングホームの試み
1 地下空間に出現した「商店街」
・ピレフセット認知症センター(デンマーク)
2 中庭で世代間のコミュニティをつなぐ
・ハンゼヒールド・ブリンクホーフェン(オランダ)
3 施設居住を意識させない中庭で街並み再現
・リートフェルト・アクティビティ(オランダ)
4 入居者と職員により検討された改修デザイン
・スワンダム・ナーシングセンター(デンマーク)
5 壁紙やガラスシートで疑似屋外環境をつくる
・ソナーハウス・ジュリアナ(オランダ)
6 周辺地域との境界線のないナーシングホーム
・ホルメガード・スパルケン(デンマーク)
7 地下室のレミニセンス博物館で世代間交流をはかる
・アクロポリス(オランダ)
COLUMN
癒やしの水辺景観―ニューハウン
アートで癒やしのメッセージ―ストックホルムの地下鉄駅
自然環境に溶け込む心を癒やす空間①―テンペリアウキオ教会
②―スコーグスシュルコゴーデン
4章 高齢者居住環境における新たな「場」の創出
1 介護職員が考える高齢者の居住環境
・「気分転換の場」のあり方
・求められる「第3の場」
2 新たな「場」の創出~深草しみずの里での試み~
・カームダウンの「場」の設定
・新たなカームダウンスペースの創出に向けて
・既存空間を活かすカームダウン「ユニット」の試み
「ユニット」へのレミニセンス要素の導入 / 「おくどさんユニット」 /「縁側ユニット」 / 「お地蔵さんユニット」
・「ユニット」設置後の入居者への影響
毎日のルーティーンになった「お地蔵さん」 / 認知症者の特有の解釈
・新たな「場」としての「ユニット」の展開方法
5章 求められる「心を癒やす」環境デザインとは
・多様性を配慮した環境デザインの方向性
・心を癒やす環境デザインの5つの鍵
① ライフヒストリーの尊重 ② 行動習性の活用 ③ ハレとケの演出 ④ セラピーの環境化 ⑤ 専門領域の統合
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