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藤森照信 読み継ぐべきこの3冊 

日本建築の本として「日本建築史序説」と「日本建築史図集」はセットで、また「都市」についての本を1冊選びたいと思いました。
ところで「日本の都市計画」の序文を書いた丹下健三さんは、広島計画で、法隆寺の配置から影響を受けたと語っています。丹下さんは前川事務所から東大大学院に戻ったけど、戦前の東大はまだ小さく人数も少なく、歴史や設計の距離感も今より近かった。そうした環境で太田先生が考えたことは、丹下さんにもちゃんと伝わっていたし、伊藤ていじさんや磯崎新さんにもつながっていきます。この3冊は、戦後の復興期、日本建築史、建築設計、都市計画の流れ、基礎を決めたものなんです。

戦後の日本建築史の基盤をつくった通史の決定版! 

日本建築史序説 増補第三版

太田博太郎 著

四六・378頁 定価3,080円(本体2,800円+税)2009年3月

日本建築史序説は最初は薄いものでした。太田先生が、戦争中に書き上げて、戦後出版、今にいたるまで増補を繰り返しています。
日本建築史で大事なのは、時代区分と、何の建築を取り上げるか。奈良時代や飛鳥時代などの区分は最初からあったわけではありません。また、それらの建築の識別と何を選ぶかを決めるのは大変なこと。太田先生がつくった座標のうえで我々は日本の建築を考えているんです。通史は一度書かれたら超えることはできないし、代わる本がないから、どんどん厚くなる。また、文章が簡潔なのですが、志賀直哉の文章に学んだとおっしゃっていて、そうした通史にふさわしい文体で書かれています。日本で出された建築関係の本で、この本以上に読み継がれている本はないと思います。

図・写真・解説すべて良し!ずっと使える日本建築の「辞書」! 

日本建築史図集 新訂第三版

日本建築学会 編

B5・204頁 定価2,750円(本体2,500円+税)2011年1月

この本を含め、彰国社では4冊の図集(日本、西洋、近代、東洋)が出ていますが、世界的にも類書がなく貴重です。写真と解説と平面図が載っていて解説も専門的。参考文献もある。日本人は世界のことを調べているんですね。そういう本はヨーロッパなどにはなく、自分の国だけに偏ってしまう。写真も、今では取れないような貴重なものもあるし、図面もつくろうと思ったら大変。世界のありとあらゆる建築についての基本的な辞書を彰国社がつくったと考えています。僕は何冊も持っていて、今でもしょっちゅう見てる。よく見慣れたものも、気がつくことがあるし、飽きない。文章を書くときはこれで確かめます。大抵みんな、どこかでこの本を見ていると思います。この本なしに建築を考えることはできないんじゃないかな。

建築と建築のあいだを読み解く、「都市空間」の概念をつくった本! 

日本の都市空間

都市デザイン研究体 著 /彰国社 編

A5・186頁 定価3,740円(本体3,400円+税)1968年3月

日本には、この本が出るまで、「建築と建築のあいだにあるようなもの」を示す言葉がなかったのですが、それを「都市空間」として定義したのがこの本です。
ヨーロッパには広場があったので、都市空間という概念は早く成立しました。建物で囲まれた場所が社会的にも建築の造形についても重要な意味をもっています。日本は広場がないから都市空間という概念が生まれづらい。そういうなかで、丹下健三さんや、歴史家としては伊藤ていじさん、磯崎新さんなど建築と建築のあいだに発生している空間、視覚的印象の問題をちゃんと正面から取り組もうということで出した。これ以降ずっと都市空間への関心は、宮脇檀さんや、伊藤ていじさん、陣内秀信さんなどの研究につながっている。研究の始点になる大事な本だと思います。

藤森 照信(ふじもり てるのぶ)
1946年、長野県生まれ。1971年、東北大学工学部建築学科卒業。1978年、東京大学建築学専攻博士課程修了。現在、東京大学名誉教授、工学院大学特任教授、東京都江戸東京博物館館長。専門は近代建築、都市計画史。主な著書=『画文でわかる モダニズム建築とは何か』(彰国社)、『明治の東京計画』(毎日出版文化賞、岩波現代文庫)、『建築探偵の冒険・東京篇』(サントリー学芸賞、ちくま文庫)ほか多数。主な建築作品=「タンポポハウス」「秋野不矩美術館」「熊本県立農業大学校学生寮」(日本建築学会賞〈作品〉)「ラコリーナ近江八幡 草屋棟」(日本芸術院賞)「多治見市モザイクタイルミュージアム」ほか。

著書のご紹介 

画文でわかる モダニズム建築とは何か

文 藤森照信 画 宮沢 洋
A5変・128頁 定価2,090円(本体1,900円+税)

藤森照信によるモダニズム建築論を宮沢洋が描くイラストとともに楽しく学ぶ入門書。
世界中の都市に鉄とガラスとコンクリートでつくられた四角い箱が立ち並んでいるのはなぜか?
歴史主義建築が席巻していた19世紀から一転、インターナショナル・スタイルがどのように生まれ世界に広がったのか、その謎に迫る。

藤森先生 茶室指南

藤森照信・大嶋信道 編/藤森照信・中村昌生・大嶋信道・小川後楽・原広司・速水清孝・隈研吾 著
A5・254頁 定価2,640円(本体2,400円+税)

利休らの精神を受け継ぎながら、自由でユーモラスな藤森流茶室。茶室事始めの「薪軒」(1997年)から、高床式住居の発想を大胆に拡張させた「高過庵」(2004年)、台湾の茶文化との出会いから生まれた望北茶亭(2014年)などの最新作まですべてを網羅する。また、茶室の研究家、煎茶の家元、茶室の試みを現代建築の中に活かす2人の建築との対談を織り混ぜ、ビルディングタイプとしての茶室を拡張・逸脱することでその可能性を見出す。

藤森流 自然素材の使い方

藤森照信・内田祥士・大嶋信道・入江雅昭・柴田真秀・西山英夫・桑原裕彰 著
A5・248頁 定価2,640円(本体2,400円+税)

建築史が専門の建築探偵・藤森照信が、自ら設計を手がけた作品(8点)を紹介。作品の概要、エッセイ、図面(平断面図など)とともに共同設計者との対談も収録。自然素材を使った独自の試みを披露。巻末には石山修武による藤森作品の解説をつけた。

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