彰国社

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五十嵐太郎 読み継ぐべきこの3冊 

建築史を専門とする人以外も、歴史を学んでほしいと思っています。教科書的なもの、歴史の流れに近代建築を位置づける視点をもたらすもの、現代建築を批評しながら、日本建築史の知見も取り込んだもの。どの本にも「歴史」が含まれているんです。

豊富な写真と図面、解説。情報量と網羅性がすごい! 

西洋建築史図集 三訂版

日本建築学会 編

B5・230頁 定価2,750円(本体2,500円+税)1983年4月

この本は、教科書として知られていますが、旅行に図面と解説をコピーして持っていったり、いろいろな使い方が考えられます。僕は、大学院の試験で後ろの解説を2回通して読んで合格したんです。写真は白黒ですが、解説に欧文の名称も表記してあるので、画像検索と併用した、ハイブリッドな使い方がお勧めです。良い解説にはネットからはなかなかたどり着けません。現時点でこれを超えるものはないでしょう。

西洋古典建築と近代建築を接続するアクロバティックな形態分析! 

コーリン・ロウ建築論選集

マニエリスムと近代建築

コーリン・ロウ 著/伊東豊雄・松永安光 訳

A5・286頁 定価5,126円(本体4,660円+税)1981年10月

いまは、西洋の古典建築への関心は薄くなっているかもしれません。でも、本書の、近現代の建築を大きな歴史のなかに位置づける見方や形態分析は、西洋建築史の教養があればこそできるもの。かつてはデザインをやる人も歴史が重要という認識がありましたが、いまは消えてしまっています。この本の「建築の形」そのものを見る見方は、「形」を読み解く基礎として、いまの建築を見るうえでも、ヒントになります。有名な「透明性 虚と実」の論は、概念的に建築を分析する方法を提示して、創作をするひとにも刺激を与えると思います。本に図版がない建築も現在はネットで検索でき、読みやすい環境となっているので、ぜひ挑戦してほしいと思います。

一見言いたい放題の辛口批評。実は専門領域フル活用の現代的集合知。 

復刻版

現代建築愚作論

八田利也 著

B6・238頁 定価2,200円(本体2,000円+税)2011年10月

磯崎新、伊藤ていじ、川上秀光が、共同のペンネームで書いた建築批評です。言いたい放題に人を食ったように見えますが、社会や建築のあり方や職能をめぐる鋭い批評、批判に満ちています。それぞれの専門領域をフルに活用した集合知でもあります。
戦後のドラスティックな変化をめぐる証言としても、現代の建築の変化と重ね合わせても面白いのですが、何より皮肉やアイロニー、反語など、さまざまな語り口は魅力的です。いま、建築をめぐる議論は、SNSなど自由に広がっているようで、すぐ炎上したり、学生やメディアも批判を避けるようにおとなしくなってしまっています。こういう言説があることは重要ですね。

五十嵐 太郎(いがらし たろう)
1967年、パリ生まれ。東京大学大学院修了。博士(工学)。現在、東北大学大学院教授。第64回芸術選奨文部科学大臣新人賞、2018年日本建築学会教育賞。ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展2008日本館コミッショナー、あいちトリエンナーレ2013芸術監督。主な著書=『現代建築宣言文集[1960-2020]』(彰国社)、『建築の東京』(みすず書房)、『装飾をひもとく』(青幻舎)、『モダニズム崩壊後の建築』(青土社)、『新編 新宗教と巨大建築』(ちくま学芸文庫)、『建築と音楽』(NTT出版)ほか多数。

著書のご紹介 

現代建築宣言文集[1960-2020]

五十嵐太郎+菊地尊也 編
四六・432頁 定価3,300円(本体3,000円+税)

1960年のメタボリズムから2020年まで、現代の建築概念を揺るがしてきた建築家や批評家による50の言説を再録・解読するアンソロジーである。各言説には、五十嵐太郎、菊地尊也ほか東北大学五十嵐研究室による解説文も掲載。約半世紀にわたる言説の蓄積を振り返ることで、現代の位置を確かめ、未来につなぐ。

建築文化シナジー
卒業設計で考えたこと。そしていま 3

五十嵐太郎+市川紘司 編
A5・224頁 定価2,096円(本体1,905円+税)

「現在活躍している建築家の卒業設計が見たい」という学生の声から始まった『卒業設計で考えたこと。そしていま』の3冊目。日本をリードする10組の建築家(内藤廣、坂茂、山梨知彦、島田陽、藤野高志、永山祐子、藤村龍至、稲垣淳哉、大西麻貴、増田信吾+大坪克亘)にインタビュー。建築家の原点は卒業設計にある。

14歳からのケンチク学

五十嵐太郎 編
四六・336頁 定価2,035円(本体1,850円+税)

中学・高校で学ぶ18科目から「ケンチク学」をひもとく入門書。建築はあらゆる学問に通じていること、また、そこに秘められた面白さを知る手掛かりを提供する。

窓から建築を考える

五十嵐太郎+東北大学五十嵐太郎研究室+市川紘司 編著
四六・224頁 定価2,037円(本体1,852円+税)

採光や換気を促すために生まれた「窓」の役割は、照明、空調、材料、構造といった技術の発展とともに多様化し、それは建築のデザインにも反映されている。本書はそうした窓の変遷を軸に、建築・技術・美術の歴史の見取り図を横断的に描き、それらの結束点である窓のパラダイム・シフトをとらえなおす。

建築文化シナジー 建築学生のハローワーク 改訂増補版

五十嵐太郎 編
四六・288頁 定価2,200円(本体2,000円+税)

建築を学んだあとに進む道は、建築家だけではない。建築家は、数ある職業の1つでしかない。この増補改訂版では、52の職種を紹介する。また、紛争地域で平和活動をしたり、スピリチュアリストに転進した人も含め、国内外で活躍する建築出身29人にインタビュー。29の生の声は、自分がこれからやりたいことへのヒントと生きる自信を与えてくれる。

建築文化シナジー 建築・都市ブックガイド21世紀

五十嵐太郎 編
四六・288頁 定価2,409円(本体2,190円+税)

もっと建築を知るためのブックガイド。レム・コールハース、磯崎新、伊東豊雄の著作、モダニズム、ポストモダン、日本文化、住宅、リノベーション、郊外、フィールドワーク、秋葉原、アートなど、300冊以上を紹介!

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